5月5日(水)の子どもの日。江戸川河口で「お江戸投網まつり」が開催されました。一之江駅から交通公園まで歩き、屋形船に乗船して待つことしばし。午前11時、今井橋近くの洋上にお江戸の屋形船11隻が集結し、葛西囃子が楽しげに響き出すなか、開会式が始まりました。
主催者あいさつが次々と行われ、いよいよ船の出番です。本船の前に11隻の屋形船が次々進み出て、自慢の投網漁を披露してゆきます。江戸屋形船組合:小島一則さんの粋な解説で投網を打つ漁師さんと船名が紹介され、網が見事に開いて大きな円を描いて水面に落ちるたび、歓声があがります。400年つづく細川流の投網の技を受け継ぐ江戸投網保存会の面々は、日ごろの腕前をここぞとばかりに見せてくれます。こうして、楽しい「お江戸投網まつり」は始まりました。
投網を打った船は次々と江戸川を下り、江戸川河口へと向かいます。なぜか競うようなスピードで! あとで聞いたら「漁師本能で漁場をめざす」とのこと。やっぱり本物の漁師さんたちです!!
さて、急いだ先はディズニーランドを目の前に見る葛西臨海公園です。ここではもはや網打ちの順番などは関係なく、それぞれの船が腕に覚えのあるポイントで投網を打ってゆきます。船を動かす船長の技量も大切で、投網漁と船の動きは一対となっているようです。屋形船に乗った大勢の一般参加者は、自分が乗っている船に愛着を持つものの、他船が見事な投網を打てば惜しみない拍手を送ります。何かが獲れたと思ったら、江戸前のスズキ。こんなにも街の近くで立派なスズキが獲れるなんて! と思わず拍手も大きくなりました。
屋形船のなかでは、おいしいお刺身や天ぷらがふるまわれ、参加者はお大尽気分いっぱい。江戸時代には全国から集まってきたお殿様に、明治以降は大店の旦那衆に見せていたという風流な伝統漁法は、まさにお江戸の華とでもいうべきもの。おいしいお酒やお料理、そして漁師さんの江戸ッ子語りも、なんとも江戸情緒あふれるもので心地よく、すっかり江戸気分に浸らせていただく一日でした。
ところで、日本には全国に6000所の浜があり、それぞれ独自の文化や伝統、気風があります。私は、東京湾の漁師さんは全国でも他に例のない存在だとつくづく思いました。全国の漁師さんは「魚を獲ること」だけに集中していますが、江戸の漁師文化は魚を獲ることはもちろん、「漁を見せること」、「おいしく食べていただくことも仕事のうち」、という気風です。そしてまさに江戸っ子らしい話しぶり。落語の語りは漁師文化から生まれたのじゃないか、とさえ思えてしまいます。
第一次産業と第三次産業が一緒になったような不思議な仕事が「江戸漁師」。今回は投網漁で堪能させていただきましたが、もっともっと違う漁法や魚たちを見せていただきたいというのは、無理なお願いでしょうか。どうぞよろしくお願いします! |